最高裁判所第三小法廷 昭和25年(あ)1395号 判決
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
被告人及び弁護人平松勇の各上告趣意は、末尾に添えた書面記載のとおりであって、当裁判所はこれに対し次のように判断する。
被告人の上告趣意について。
論旨は、原審の量刑を不当とする主張であって、上告の適法な理由に当らないから採用できない。
弁護人平松勇の上告趣意について。
いわゆる必要的弁護事件は、弁護権につき憲法上の保障がなかった旧刑訴法時代にも規定されていたのであり、必要的弁護事件を如何に定めるかは刑訴法上の問題で憲法三七条三項の関知するところでないこと当裁判所大法廷判決の示すとおりである(昭和二四年(れ)第六〇四号同二五年二月一日大法廷判決)。それゆえ、刑訴二八九条が憲法の右規定の具体的表現であるとの主張は採用できない。そしてまた、「必要的弁護の事件において裁判所が公判期日の前日に弁護人を国選することは当を得たものではないが、その一事により直ちに弁護権の行使を不法に制限したものとはいえない」ことも当裁判所の判決に示されている(昭和二三年(れ)一四八八号同二四年七月一三日大法廷判決)。されば、原審が所論のように公判期日二日前に弁護人を国選したとしてもその一事によって直ちに刑訴二八九条に違反したものでもなく、まして憲法三七条三項に反するものでないことは前記大法廷判決の趣旨に徴し明らかである。
よって、本件上告を理由ないものと認め、刑訴四〇八条、一八一条に従い裁判官全員の一致した意見により主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保)